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Resources - コンパクトストランドとダイフォーム

加工工程や性能が異なる複数のワイヤー? 

一口に「ワイヤーロープ」と言っても、その種類は多種多様です。当然それぞれ特徴も適合用途も、NGな使い方も異なっており、どれが品質的に上、下、といった単純な定義づけが出来るものでもありません。そこで、このページでは特に、完成ワイヤーまたはワイヤーを構成している素線に施されている特殊な加工の有無という切り口で、3つのグレードのワイヤーを比較してみます。

同じSUS316、1×19のストランドでも・・・

1×19のワイヤーとは、単純に19本の素線を撚って作られたワイヤーロープです。当然ですが完品ワイヤーは人間の体感としては非常に硬いものですが、円筒形の素線を撚り合わせた通常のワイヤー断面の金属充填度は意外と高くない(丸みと丸みの間に隙間が多く生じている:図参照)のです。そこで、こうした隙間を小さくしてより密度を高める追加加工が施されたワイヤーや、撚る前の素線に加工を施したワイヤーというものも存在します。※ここでは単純比較のためワイヤーの構造を1×19限定して解説していますが、その他のワイヤーにも同様の種別が存在します。

コンパクトストランドワイヤー

円筒形の素線を撚って作った一般的なワイヤーにローラーがけなどの圧縮加工を加え、断面の密度を高めたワイヤーです。丸い素線をただ撚っただけの状態より外径が小さくなるためこの名称で呼ばれます。また、表面が平坦化されるため通常のワイヤーよりも滑らかであることも特徴です。密度が高い分同径の通常ワイヤーより高強力であり、摩耗に強くドラムやシーブなどとの接触面積が増えるというメリットもあります。一方で、密度が上がる分柔軟性は低下する傾向があり、圧縮度合いや使用条件(曲げ疲労があるような用途)によっては通常のワイヤーより却ってパフォーマンスと落とすこともあります。

ダイフォーム(Dyform)

現在はワイヤーのグレードを表す一般名称のように使用されていたり、コンパクトストランドと同一視されたり、酷い場合は「ダイフォームコンパクト」などのキメラ的名称になっていたりもしますが、Dyform自体は元来Bridon-Bekaert固有のブランド名称であり、両者は製造方法も特徴も異なります。コンパクトストランドが完成したワイヤーを圧縮加工するのに対し、Dyformは撚る前の素線を多角形状に予め加工し、これを組み合わせてワイヤーにします。はじめから断面形状が設計されているため、コンパクトストランドよりも更に高い密度と強度を持ち、伸長率も低く疲労しにくいという特徴を持ちます。一方、柔軟性を損なっているというマイナス方向の特徴もコンパクトストランド以上に顕著になっており、非常に密な構造は内部腐食のリスク増大とこれに気づきにくいという弊害を生む可能性があります。

一般的な1×19ワイヤー断面

コンパクトストランド断面

ダイフォーム断面

画像は断面の金属密度および素線の形状比較のために弊社で作成したイメージです。実際のストランド構造はワイヤーメーカーによって異なるほか、コンパクトストランドは圧縮度合いによってより円筒に近い形状を取ったり、逆にダイフォームに近い形状まで引き締まっていたりと様々です。

各ワイヤーの性能および付随要素の比較

一般的な1×19ワイヤーの各項目における評価を★★★とした場合の残る二者の性能はおおよそ以下のようなイメージです。なお、本項要旨外ながら、1×19というストランド構成自体が重く柔軟性が低いものとなっています(それが悪いというものではなく、あくまで適材適所の範疇における違いです)。

比較項目 コンパクトストランド ダイフォーム
強度 ★★★★ ★★★★★
耐摩耗性 ★★★★ ★★★★★
柔軟性 ★★
密度 ★★★★ ★★★★★
価格の安さ ★★
加工性 ★★

加工性(ターミナルとの接続)

一般的な1×19ワイヤーを含めたこの三者の比較において外せないトピックの一つが加工性の違いです。昨今はウェッジソケットと呼ばれる、ワイヤーの撚りを解いて中に円錐形の金具を入れた状態でエンド金物を固定するタイプのものが多く出回っており、油圧機械による圧着加工(スウェージング)なしにワイヤーと金物を接続できるケースが増えてきています。ですが、コンパクトストランドやダイフォームのワイヤーにはこのウェッジを用いた固定は推奨されません。便利なのでついついやってしまいがちですが、高いコストをかけてハイグレードなワイヤーを採用したのに不適切な施工で却って強度を損ねては無駄ですし何より危険ですので、金物メーカーのアナウンスをしっかり確認し、これを遵守することが重要です。

ウェッジと(特に)ダイフォームの組み合わせが良くない理由

結論から申し上げますと、「局部圧縮による強度低下」「滑る(適切に保持できない)」ためです。

強度低下:
ウェッジソケットによる固定方法とは、テーパー型のウェッジ(楔)を、ほどいたワイヤーの素線内に抱き込ませてからエンド金物のワイヤースロットにこれを挿入することで高いピンポイント圧縮をかけ、その摩擦でワイヤーと金物を固定するという方式です。この固定に際してはストランドがある程度変形する(潰れる)ことが織り込まれており、素線が円筒形のままの一般的なワイヤー(密度が低い)であれば問題なく固定が可能です。一方、特にダイフォームはその硬さと柔軟性の低さ、高い密度から非常に変形しにくく、ウェッジからのピンポイント加圧で曲げ疲労と大きな応力を受けてしまい、結果として接続部の強度が下がってしまう恐れがあります。

滑る:
曲げ剛性の高いダイフォームのワイヤーはウェッジのテーパーに十分沿ってくれないことがあり、結果的に十分な摩擦が得られず滑って抜けてしまうリスクがあります。これはより大きな荷重を扱うような環境(大型のクレーンなど)おいてよく取り沙汰される話題ですが、ダイフォームをウェッジ固定することが忌避されるというのは、施工場面おいてある程度一般通念的な認識が共有されているものです。

ではどうすれば良いのか

単純に、コンパクトストランドやダイフォームのワイヤーは可能な限り従来のスウェージング加工を行うことが推奨されます。本来ダイフォームは「ポットソケット」や「スペルターソケット」と呼ばれる、先端の撚りをほぐしたワイヤーをソケットに収め、ここに溶融樹脂や溶融金属を充填して固定するという方法が推奨されます。しかしながらこの施工には専門的な設備と技術が必要で高温での施工が必要となるため、マリンレジャー産業にあっては実施可能な事業者は限られます。一方のスウェージングにあっては、保持強度が90%程度に留まってしまうという声も聞かれるものの、現実的にはこれが最適な加工法と言えます。

なお、一部メーカーにおいてはダイフォームに使用可能なウェッジを製造販売しているケースもあります。具体的な仕様はメーカーによって異なる可能性がありますが、一般的にはウェッジの角度や接触面の形状、グリップの長さ(多角形のダイフォームと面で接触出来る)がダイフォーム向けに調整されていることが多く、こうした専用ウェッジは逆に一般的なワイヤーには使用できないなど、多くは厳格な使い分けが存在します。また、そもそも論ですが、ウェッジ固定は静荷重を想定した施工方法であり、巻取りや衝撃荷重がかかるような用途ではウェッジの使用自体が推奨されません。

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